野球のドラフトの「指名順位の縛り」について解説

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気がついたら日本シリーズが終わっていました。

ベイスターズファンなので他所の試合はそこまで興味がありません。

野球のシーズンというのは7月か8月に閉幕するものだと思っていました。

今年は18年ぶりにポストシーズンを見ましたが、CSと日本シリーズの間にドラフトがある事に初めて気が付きます(18年前は日本シリーズの後にドラフト)。

そんな野球ファンであるまじきメタボ教授が今回語りたいのは、ドラフト会議における履正社高校の山口投手の指名拒否問題です。

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デイリースポーツより

日本ハムからドラフト6位指名を受けた山口裕次郎投手(18)=履正社=が、入団を拒否する方針であることが23日、分かった。
岡田龍生監督(55)が「本人が『行きません』と言っているので、こちらとしても(プロへ)行かせることはできない」と明かした。
ドラフト前に調査書を提出した11球団には、4位以下の指名であれば社会人野球へ進む方針を伝えていた。
前日夜になり、複数球団から4位以下での指名が可能かどうか最終確認が入った。「今だったら修正ができる」と岡田監督が本人に伝えても、意思は変わらなかった。
日本ハムからは事前連絡がなく、翌日に日本ハム・大渕スカウトディレクター、木田GM補佐、芝草スカウトが強行指名の経緯を説明しに同校を訪問。
本人は同席しなかった。筋を通し、指名を回避した球団もあるだけに「信用問題になる」と岡田監督は厳しい表情を浮かべる。
11月には入社試験を控えており「今週中に結論を出します」と語った岡田監督。山口は今春から4位以下なら社会人野球に進むと明言し、その意思は一度もぶれなかった。次のステージでレベルアップを果たし、3年後の指名を待つ方針だ。

これについては
「強行指名する日ハムが悪い」
「指名順縛りを付ける山口投手が傲慢」
と賛否両論ありますが、そういう単純な話ではありません。

ドラフトの本質

アマ球界からプロ球界へのトレードです。

選手には多額の契約金が支払われますが、その何%かを選手が学校に寄付する慣習が一部残っています。

準プロである独立リーグだと「NPBに行く場合は契約金の◯%を移籍金替わりとしてチームに支払う」と予め決まっています。

ゆえにドラフトでの指名順位の縛りは、契約金(移籍金)の問題です。

それゆえ本人の意向だけではなく、学校の意向もあります。

実際山口投手は指名されて笑顔でした。

寄付金云々が関係なくても「高校野球が大学や一般企業への橋渡し的な役割をしている」点がこの問題の本質となっています。

簡単な話、高校3年の夏が終わって

「はいお終い」という高校と

大学へ推薦してくれたり、社会人野球を斡旋してくれる高校と

では、
どちらの学校に有力選手が集まるか、言うまでもありません。

学校側としては一人でも多くの部員の進路を確保したいので、大学野球や社会人野球のコネクションは重要です。

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山口投手の場合はドラフト前からJR東日本からオファーがありました。

JR東日本は超優良企業です。

日ハム球団はおろか、親会社の日本ハムより上です。

履正社の岡田監督が「信用問題になる」との言っていますが、これは順位縛りで指名を見送った球団に対してではなく、JR東日本に対しての信用問題だと思います。

それゆえ日ハムはJR東日本を上回る待遇を提示しない限りは、履正社から山口投手を獲得出来ないわけです。

その目安がドラフト3位以内だったわけですが、日ハムはそれを無視して「本人を納得させればいいやろ」的な指名をしました。

選ぶのは本人の自由ですから、どうなるか解りませんが、引き抜きに成功したとしても、今後は履正社高校とJR東日本から絶縁状態となるはずです。

ドラフトの是非

ドラフトというのは基本的に選手側の権利というのはありません。

悪く言えば人身売買です。

今回の件を問題にするなら指名順縛り云々ではなく、ドラフトの仕組みを考え直すべきでしょう。

ドラフト制度は言うまでも無く、アメリカの真似事です。

しかし、アメリカの場合はプロとアマチュアとの関係が異なります。

アメリカには社会人野球がありませんし、大学に進んでも学歴ロンダリングみたいな事は出来ません。

日本のようにアマチュアがセミプロレベルで機能している場合は、それに併せた制度を考えるべきです。

例えばサッカーには「連帯貢献金」という制度があります。

簡単に言うと、移籍金が発生した場合、売却チームだけではなく、育成に関わったチームもお金を受け取れる制度です。 昨年レスターに移籍した岡崎慎司選手だとこのような金額になります。

サッカーでは移籍金以外にも支払われるお金があるより引用

サッカー日本代表の岡崎慎司選手が、ブンデスリーガのマインツからプレミアリーグのレスターへの移籍が決まりました。レスターはマインツに移籍補償金として1,000万ユーロ(約13億8,200万円)を支払ったようです。

今回の移籍は、ドイツからイングランドへの国際移籍になりますので、サッカー選手の移籍金 の記事で書いたように、12~23歳の間に在籍したクラブは連帯貢献金を請求することができます。

連帯貢献金は移籍金の5%で、12~15歳の間に所属したクラブは1年当たり0.25%、16~23歳まで所属したクラブは1年当たり0.5%を請求することができます。

岡崎選手は、中学時代は宝塚FCと三田市立けやき台中学校でプレーし、高校時代は滝川第二高校でプレーしていました。高校卒業後は清水エスパルスに入団して、24歳のときにドイツのシュツットガルトに移籍しました。

これらの所属チームは連帯貢献金を得ることができるということになります。中学時代はどちらのチームで日本サッカー協会に登録していたのかにより、連帯貢献金を請求できるのかが決まります。

中学時代に所属していたチームは、約104万円を請求することができます。

滝川第二高校は約207万円、清水エスパルスは約346万円を請求することができます。

野球の場合は移籍金というのがなかなか発生しないため、改良が必要ですが、これなら学校側と揉める可能性が少なくなります。

メジャーに気が付かれるとまずい

メジャーリーグだって日本の若い選手は欲しいです。

大谷翔平も日本かメジャーかで迷いましたが、もしメジャー側が「花巻東高校に移籍金を払う」という発想を持っていたら、今頃メジャーで投げていたかもしれません。

日本のプロ野球を経由せず、直接メジャーに行った田澤にレッドソックスが用意した待遇は3年400万ドルでした。

プロとしてまだ何もしてないのに、一生遊んで暮らせる金額です。

新人選手にそんな高い金額を払うのは本来おかしな話ですが、日本のアマ野球界はセミプロ化している以上、獲得するのに多額のお金を費やすのは仕方無いと思います。

高校側としては、『高卒で』プロ野球選手を出すことよりも、一人でも多くの進学先・就職先を確保する事の方が大切です。

大学や社会人を経由してプロになったとしても「プロ野球選手の排出実績」になりますから。

そういった現状を考えると「ドラフトの指名順縛り」というのはあって当然です。

プロ野球側がドラフトの制度の可否を含めて、アマ球界との関わり方を改善する必要があります。

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